こんにちは。コオロギ社長です。
「コオロギって栄養の機能性と、環境負荷が小さく環境に良いのが売りだよね」
多くの方から言われます。
実際、この2つがコオロギの大きなメリットとしてわかりやすいところかなと思います。このあたり以前も記事でまとめましたが、改めてまとめてみようと思います。
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目次
昆虫(コオロギ)と畜肉(牛・豚・鶏)の飼料負荷
昆虫と畜肉の飼料負荷(どれだけ餌が必要か)の比較は、FAOの報告書にあるこのグラフが引用されることが多いのかなと思います。(引用元はvan Huis, 2013)
このグラフを簡単に解説します。
円グラフ…可食部の割合を示しています。牛(beef)は40%が食べられる部分ということです。食べられない内臓や、血、骨、皮などが残りの60%です。半分以上捨てられているのは驚きですね。
棒グラフ…灰色の棒グラフ(左)は体重1kgを増加させるのに必要な飼料の量。緑の棒グラフは(右)は可食部1kgを増加させるのに必要な飼料の量です(可食部の割合を加味した量ということです)。よく値にずれがあるのは”体重なのか可食部なのか”という違いになります。
牛肉は25kgの飼料から1kgの可食部(いわゆる精肉)が作られるということです。
このグラフはコオロギと他の畜肉の飼料負荷の比較において、視覚的にも非常にわかりやすい図だと思います。これを少しクリティカルに(批判的に)見てみましょう。
前提: 昆虫が畜肉により効率が良い理由の1つ
哺乳類や鳥類は恒温動物(体温調節能力があり、外気温に関係なく、ほぼ一定の体温を維持できる動物)です。
一方、昆虫は変温動物(体温調節機能がなく、外界の温度に応じて体温が変化する動物)です。
昆虫は、体温調節に必要なエネルギーが不要なため、畜肉に比べ効率的に生産できると言われています。
批判: 条件は揃っているかどうか。
この元論文を読んでいないのはめちゃくちゃ怒られそうですが、これから読むので許してください。何が重要かというと、このグラフを見た時に、どこに着目するかというところがわかってもらえればと思います。
①気温などの環境は何を元にしているか
恒温動物である牛は体温調節にエネルギーを使うため、寒い地域であればより多く餌を必要とします。虫は変温動物ですので、寒いと活動が鈍くなり、餌を食べず成長しません。なので条件が揃っているのか、という点は確認する必要があります。
②飼料のたんぱく質含有量は同じか
コオロギを飼ってみてわかったんですが、餌に含まれるたんぱく質の含有量によって成長スピードも大きく変わってきます。例えば、魚粉や大豆など比較的たんぱく質が豊富な餌を与えれば、どんどん大きくなります。一方で、野菜や果物などたんぱく質が少ない餌を与えると、当然成長が遅くなります。(あくまで経験則です)
ただ、言えることは、魚粉2kg、とうもろこし2kgを餌にすることは「飼料の重さ」の観点からは同じですが、「飼料の質」が全く違うはずです。フェアな比較をするには、1kgの可食部を生産するのに同じ餌を与えて比較することが必要です。
しかし、条件を揃えればいいかというと、牛のような草食動物と、豚・鶏・虫の雑食性の動物を比べるのは意味があるのかという問題もありますね。
③コオロギの可食部80%は正しいのか。
コオロギパウダーを加工する過程では、コオロギを外骨格含め粉砕加工しています。なので、そもそも可食部100%じゃないのかな…という点も気になるところです。
この記事のまとめ
コオロギが畜肉に比べて飼料負荷が小さいことは間違い無いです。
自分の会社も含め、企業やメディアで使用される図ってわかりやすさの追求ばかりで、「ほんとはどうなんだろう??」と思うことがあるのかなと思います。情報を鵜呑みにせずちょっと考えてみると学びが深まりそうですね。(と書いている僕がちゃんと論文レビューしていないので読みます。すみません)
環境負荷の比較に対する疑問点と解説、興味深く拝読しました。
この比較に対しては個人的にも気になる点があります。それは「畜肉との比較はよく見かけるけど、魚介類との比較をあまり見ない」ことです。特に風味や体組成のよく似てるエビなど。。。
(ここで書くコメントとして相応しいのか少し不安になってきましたが、)いつかこの辺りとの比較も読んでみたいと考えております
コメントありがとうございます。
確かに海産物との比較は見ませんね…
天然物ではなく養殖したものとの比較になるかと思いますが、魚の養殖は魚粉を使うものも多く穀物飼料を与える畜産物と比較が難しそうですね。
私の方でもリサーチしてみたいと思います!